2027年介護保険法改正・報酬改定に向けた最初の山場となる今年度骨太方針に注目

令和6年度介護報酬改定が施行されたばかりですが、次期法改正・報酬改定に向けた動きが早速活発になっています。今後の大注目は、6月に閣議決定が予定されている「経済財政運営と改革の基本方針2024(骨太方針2024)」の中身です。この骨太方針は、毎年政府より示されるもので、今後の政策の指針となります。この骨太方針に記載された内容は、どのような形に着地するにせよ原則は、実現に向けた政策立案が進められていくこととなります。今年度の骨太方針2024に、社会保障政策がどのような記述となるかに注目しなければなりません。
その骨太方針の取りまとめに向けて、4月16日に財務省は財政審を開催し、社会保障をテーマとした議論を行い、5月21日には「我が国の財政運営の進むべき方向」と題した建議を政府に提出しました。財政再建に向けた社会保障費の抑制政策が中心であり、介護事業者にとっては厳しい提言がいくつも示されています。
また、5月23日に、岸田総理を議長とする「経済財政諮問会議」が開催されました。この会議の議員は、林官房長官、松本総務大臣、鈴木財務大臣、齋藤経産大臣に加えて、財界人が多数の構成となっており、社会保障改革を推進していく立場での議論となります。
今回の会議においても、岸田総理は、「医療費・介護費の適正化に向けた改革を前進させる」と発言しました。この発言は大変重たい言葉です。政府が適正化と表現した際は、実質的な削減を意味すると捉えても過言ではありません。社会保障は削減すべき予算ではないとの認識から、支出の適正化、無駄をなくすという言葉を使った実質的には削減を意味します。総理がこの発言をしたということは、上述した6月に取りまとめられる骨太方針2024にも「介護費の適正化」の表現が盛り込まれる可能性が高いということであり、次期報酬改定(2027年改定)におけるマイナス改定の可能性が、この6月時点で、ほとんど確定してしまう可能性すらあり得る状況にあります。
更には、財界人を代表する議員複数名での連名による提言には、介護政策において「ロボット・AIの活用」「経営大規模化」「保険外サービス活用」「利用者2割負担の基準見直し」といった文言が記載されています。介護従事者不足や地域差に対する「介護サービス提供体制の中長期ビジョン」を示すべきとの提言も行われました。中長期ビジョンを示すことには、私も大賛成であり、今後の更なる高齢者増・要介護者増に加えて、現役世代の急減を迎える人口構造に対して、介護保険制度と介護事業者によるサービス提供をどのように持続可能にしていくのか?この問題には、全国民が関心を示して取り組んでいかなければいけない、日本の最重要課題であると思います。もちろん、この中長期ビジョンの具体的な中身については、様々な立場によって意見が異なることは間違いありませんが、しっかりと議論を進めていくべきと思います。
また、鈴木財務大臣からは、財政審での提言をベースに、改めてこの会議の場でも、「人員配置の効率化の推進」「経営の協働化・大規模化の推進」「集合住宅に対する利用者の囲い込み・過剰サービスの是正」「保険外サービスの柔軟な運用」「利用者負担(2割負担)の対象者拡大」「ケアプランの有料化」「軽度者改革(要介護1と2の介護保険外し)」など厳しい提言が示されました。この会議の本来議員ではない武見厚労大臣も今回は臨時参加されました。武見厚労大臣からは、「介護DXの推進」「医療連携の推進」など、従来の厚労省方針が示されるとともに、大臣のライフワークでもある日本の介護を世界に発信する「国際・アジア健康構想の推進」も示されました。
これらの、内容を踏まえた上で、現在、骨太方針2024の原案取りまとめが行われています。6月中には正式に閣議決定されることとなり、社会保障や介護政策が具体的にどのような書きぶりとなるか。我々、介護業界は、大変注目すべき内容となります。

斉藤 正行氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体