ケアマネジャーの更新制度・更新研修の在り方の見直し議論のゆくえ
ケアマネジャーの在り方を問い直す議論が活発化しています。厚生労働省は今年度から、「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」を設置し、ケアマネジャーの在り方に関する議論を始めました。
4月に開催された第1回検討会では、
- ケアマネジャーの業務の在り方について
- 人材確保・定着に向けた方策について
- 法定研修の在り方について
- ケアマネジメントの質の向上に向けた取り組み
とりわけ大きな関心を寄せられているのが、「ケアマネジャーの更新研修の在り方」です。
全国のケアマネジャーから更新研修廃止の署名活動が行われているほどに不満の温床の1つとなっています。この更新研修について論考したいと思います。
まず、現場から多くの不満の声があがっている課題点をいくつか確認します。ケアマネジャー資格は5年間での更新が求められますが、更新の回数や実務経験によって異なりますが、まずはなんと言っても更新研修が長時間であることです。
前述の通り、居宅介護支援のケアマネジャーは、24時間365日といっても過言ではない環境で、日々様々な相談を受けており、その多忙な中で、義務となる研修に膨大な時間数が割かれることに疑問の声が多数です。
そして、その研修の内容も、各地域によって統一カリキュラムであるものの、研修実施主体や講師の力量等によって大きく異なっており、画一的な研修も多く、学びの機会が少ないとの声も多数です。加えて、その研修費用は一部の自治体において補助制度が存在するものの、原則は個人負担となります。
また、更新時期の管理も自治体によっては通知されないケースもあり、自己管理が求められ、冠婚葬祭など外し難い研修日程であった場合でも、参加しなければ資格が消失してしまうことにも大きな不満の声があがっています。
このような現状への不満が、更新を行わないケースや、新たなケアマネジャーの資格取得への意欲をそぎかねない状況となっており、ケアマネジャーのなり手不足の大きな要因の1つとなっており、更新制度・更新研修の抜本的な見直しが不可欠であると思います。
また、そもそも、数ある資格の中で、なぜケアマネジャーには更新が求められるのか?更新制度そのものの必要性を問う声も多数聞こえてきます。しかしながら、現状の政府の方針には、更新制度を廃止する方向性は見られません。制度の廃止を求めるならば、これまでの議論の過程をしっかりと検証した上で、反証する確かな論拠がなければ実現は難しいと言わざるを得ません。
介護保険施行間もない2003年より、制度の根幹ともいえるケアマネジャーの質の向上に向けて、公的な検討会が設置され、丁寧な議論や、データ検証の結果、更新制度が導入され、その後も、継続的な議論が行われ、更新制度や研修の内容は都度見直されて、現在の制度運用となっています。
私は、その意味で、更新制度には、前述の通り多数の課題が山積していることは確かですが、そのことだけをもって現時点で制度の廃止を主張することには無理があり、制度の在り方を中期的に議論していくことが必要であると思います。
一方で、制度・研修の抜本的な見直しが必要であると考えていますので、現行制度の運用の中でも、
- 更新頻度の期間延長
- 研修時間数の簡素化
- 研修カリキュラムの見直し
- 研修実施方法の見直し、講師のレベル向上
- アーカイブ研修の導入
- 研修受講費用の補助制度の創設
- 研修未受講者に対するフォロー体制
などなど、様々な改善策を検討することは可能であり、早期にこれらの見直し策の実現が求められていると思います。
介護保険制度における根幹ともいえるケアマネジャーの在り方に関する議論が、これから本格的に行われることは大いに期待できることであり、是非とも今後の議論のゆくえに着目ください。
斉藤 正行氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体