骨太方針2024が閣議決定される。介護制度の大改革への布石
令和6年6月21日に、「経済財政運営と改革の基本方針2024(骨太方針2024)」が閣議決定されました。毎年政府より示される経済政策・財政政策の指針となります。
この骨太方針に記載された内容は、どのような形に着地するにせよ原則は、実現に向けた政策立案が進められます。骨太方針2024に、社会保障政策がどのような記述となっているかは、今後の制度改革の方向性を理解する上で大変重要なポイントとなります。
まず、最初に申し上げたいことは、2027年介護報酬改定のマイナス改定に直結するような「介護費の適正化」の表現が記載されるに至らなかったことです。この文言が記載されてしまえば、この時点で3年後のマイナス改定に向けた流れが作り上げられることになり、大変危惧していましたので、まずは一安心と言えると思います。
しかしながら、骨太方針2024では、『医療・介護等の不断の改革により、ワイズスペンディングを徹底し、保険料負担の上昇を抑制することが極めて重要である。』と記されており、厳しい表現であることには変わりはなく、今後の制度改革が進められていくことが待ったなしであることは間違いありません。
更には、『介護保険制度について、利用者負担が2割となる「一定以上所得」の判断基準の見直し、ケアマネジメントに関する給付の在り方、軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方については、第10期介護保険事業計画期間の開始の前までに検討を行い』『高齢者向け住宅の入居者に対する過剰な介護サービス提供(いわゆる「囲い込み」)の問題…実効性ある対策を講じる。』と記されており、骨太方針において、ここまで具体的な財政再建に向けた対策が記されたことは極めて異例のことであり、2027年の介護保険法改正・介護報酬改定の議論に大きな影響を及ぼすことになります。
また、上記以外にも今回の骨太方針には介護政策に関してこれまでより多く記載されており、例えば、『人口減少による介護従事者不足が見込まれる中で、医療機関との連携強化、介護サービス事業者のテクノロジーの活用や協働化・大規模化、医療機関を含め保有資産を含む財務情報や職種別の給与に係る情報などの経営状況の見える化を推進』と記されており、生産性の向上やDX推進、経営の協働化・大規模化の促進、経営の見える化など、従来から政府が進めている改革方針が随所に盛り込まれています。
更には、『外国人介護人材を含めた人材確保対策を進める』、『医療・介護の人材確保に関し、就職・離職を繰り返す等の不適切な人材紹介に対する紹介手数料の負担の問題などについて、報酬体系の見直しや規制強化となる検討』と記されており、訪問介護の解禁の検討を進めていくなど外国人介護人材活用の更なる推進や、人材紹介会社やネット求人広告事業者に対する規制強化が進められていくこととなります。
まとめとなりますが、骨太方針2024の閣議決定を受けて、今後の介護制度の改革に向けた方向性は、ひとまずはマイナス改定の流れを固める最悪の事態とはならなかったものの、厳しい大改革が進められる方向性がはっきりと示されたと言えます。
コロナ禍の影響により2024年・2021年の2回の報酬改定ではプラス改定の気運が高まっていましたが、いよいよ次期改定からはマイナス改定の気運の中で、制度の大改革が進められていくことになると思います。介護業界にとっては大きな転換点を迎えた骨太方針2024年であると理解しなければならないと思います。
斉藤 正行氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体