介護情報基盤の整備。介護保険証のペーパーレス化。マイナンバーカードへの一本化のゆくえ

2024.07.26

令和6年7月8日に開催された介護保険部会において、厚生労働省は介護保険証のペーパーレス化に向けた取組みを進める方針を示しました。一部のメディア等では、介護保険証が廃止され、マイナンバーカードへと一本化されるとの報道がなされていますが、現時点で介護保険証が廃止される方針ではありませんので、介護現場の皆さんは誤解のないようにしてください。

今回示された方針は、利用者、自治体、介護事業所らがそれぞれ必要な情報を閲覧・把握できる「介護情報基盤」を整備する。ここに被保険者証、負担割合証に記載されている情報も格納し、マイナンバーカードで速やかに引き出して使えるようにしていくことであります。この「介護情報基盤」は2026年4月からの運用を目指しています。従って、介護保険証とマイナンバーカードとの一本化が図られるものの、介護保険証が廃止されるわけはなく、介護保険証のペーパーレス化が実現する一方で、紙での介護保険証と併用される予定であります。

この「介護情報基盤」が整備されれば、介護事業者にとっても事務負担の軽減に繋がることであり、おおいに期待されます。介護保険証のペーパーレス化も希望する利用者や、対応可能な介護事業者にとっては歓迎されることです。ただし、当面の間は紙とペーパーレスが併用されることになるので、オペレーションが2つ分かれることとなり、かえって混乱を生じさせる可能性もあります。また、マイナンバーカードを読み込むカードリーダーの導入など、相応の費用や準備が必要であり、費用負担への補助や、十分な準備期間が不可欠だと思います。

今後、「介護情報基盤」を整備し、介護事業者の事務負担の軽減のためにもマイナンバーカードの活用は大変有効であると思います。しかしながら、現時点でマイナンバーカードを取得されていない高齢者の方に取得を促していく過程で、認知症の方や家族によるサポートが得られない場合には、介護事業者によるサポートが不可欠であり、かなりの手間が生じることになります。将来の事務負担軽減に繋がるとはいえ、当面の大きな手間は、現場の混乱を生むことにもなりかねません。また、マイナンバーカードの保管や管理の在り方にも留意しなければなりません。介護施設の多くは介護保険証を施設でお預かりしているケースがありますが、マイナンバーカードの管理におけるリスクを検討しなければなりません。施設によってはマイナンバーカードのお預かりはリスクが高いと判断し、お預かりしない方針となるケースも想定されます。将来的な介護保険証とマイナンバーカードの完全な一体化には、まだまだ多くの課題が想定されます。

いずれにせよ、「介護情報基盤」の整備は、介護事業者にとっても歓迎すべきでありますが、早急な整備を行い現場の混乱とならないように、しっかりと現場の状況を踏まえた上での対応が求められると思います。

 

斉藤 正行氏

一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長

現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体

http://kaiziren.or.jp/