人材紹介会社・ネット求人会社に対する規制強化

2024.08.09

厚生労働省は、7月24日に「労働政策審議会 職業安定分科化会 労働需給制度部会」を開催し、介護分野等における人材紹介者及びネット求人会社に対する新たな規制強化対策を示しました。

具体的には、人材紹介会社に対しては、すでに義務付けられている「お祝い金」の支給や転職勧奨の禁止について、職業紹介事業の許可条件に加えるとともに、すでに許可を受けている事業者に対しても改善が見られなければ許可の取り消し対象とする方針が示されました。以前より対応は義務付けられていましたが、罰則規定がなく、一部対応している人材紹介会社の多くは継続している状況にあることから、今後の改善に、介護事業者としては期待をしたいと思います。また、人材紹介会社の手数料実績について、人材サービス総合サイトに開示することが義務付けられる方針も示されました。

ネット求人会社に対しては、特に、採用課金型と言われるビジネスモデルは、人材紹介会社と類似しているものの事業者には、許可制が設けられておらず、悪質な事業者の存在が指摘されていました。今回、ネット求人会社に対しても、求人登録・就職・定着のあらゆる過程で「お祝い金」を支払うことを原則禁止とする方針が示されました。ネット求人会社には、まずは禁止ルールを設けることから始まるので、罰則規定等が設けられるわけではないので、順守しない会社も多いのではないかと予測します。それでも、上場企業等の大手法人は、設けられたルールを順守することが予測され、今後の運用に期待をしたいと思います。近年、ネット求人会社と介護事業者等のトラブルが生じているとの報告も多く上がってきています。介護事業者等に複数の手段で応募されて採用した場合に、課金が発生するのか否か?また、求職者が複数のネット求人会社に登録し、複数の媒体より情報提供され採用に至った場合に、ネット求人会社のそれぞれの規程やルールが異なり、2重請求されるようなケースも散見されています。また、ネット求人会社の利用料金・違約金規約を明示することも義務づけられる方針も示されました。

多額の紹介手数料や課金フィーが、介護事業者の経営を圧迫しており、職員に対する処遇改善等に十分な金額が回せないという現状や、税金・保険料を原資としている介護報酬が、一部の悪質な人材紹介会社やネット求人会社に流れている構図は、絶対に防がなければなりません。これまで明確なルールが示されていなかった人材紹介会社やネット求人会社の在り方に対して、公的なルールが示されることは介護事業者にとっては歓迎されることであり、人材紹介会社やネット求人会社は、大手事業者が中心となり、業界として独自のガイドラインを設けるような取組みもこれから必要とされるのではないかと思います。

 

斉藤 正行氏

一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長

現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体

http://kaiziren.or.jp/