南海トラフ地震への警戒!業務継続計画(BCP)の策定が不可欠
令和6年8月8日に日向灘沖で発生した地震を契機に、南海トラフ地震の発生可能性が普段より高まったとされ、国より「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」による特別な注意の呼びかけが行われていましたが、令和6年8月15日で呼びかけは終了しました。
この間、日本社会全体に大きな緊張と危機感が高まったところです。呼びかけは終了されましたが、南海トラフ地震の発生は、今後40年以内に90%程度の確率で発生するとされており、決して警戒をおろそかにして良いわけではありません。南海トラフ地震は、過去100年~150年周期で発生し続けており、前回は1940年代に発生しており、前回発生より80年近い歳月がすでに経過しています。この先、いつ発生してもおかしくない状況にあります。南海トラフ地震は過去、時に超巨大地震となることもあります。
介護事業者にとっては、今回の警戒を踏まえて、高まった緊張感を今後も緩めることなく維持していくことが大切であります。また、万一の大地震や災害に対する備えをしっかりと行っておくことが不可欠です。要介護高齢者の身体・生命を守り続けることが求められる介護事業所においては、どのような状況に陥った場合でも支援を継続できる体制を整えることが求められており、業務継続計画(BCP)の策定が必須となります。
そもそも、業務継続計画(BCP)の策定は、前回(2021年)改定において、すでに義務付けられています。コロナ禍で迎えた報酬改定であり、災害や感染症への対応力の強化を図っていく観点から、全ての介護事業所に業務継続計画(BCP)の策定を義務付けました。ただし、3年間の経過期間が設けられており、令和6年3月31日までに策定が求められていました。策定に際しては、業務継続計画(BCP)ガイドラインを参考にすべきとして示されています。
この経過期間を踏まえて、令和6年度(2024年)報酬改定において、見直しが行われ、居宅療養管理指導、特定福祉用具販売を除く、全ての介護事業所で業務継続計画(BCP)が未策定の場合には、基本報酬が減算されることとなりました。施設・居住系サービスでは3%。その他サービスでは1%の減算となります。ただし、「感染症の予防及びまん延防止のための指針の整備」及び、「非常災害に関する具体的計画の策定を行っている」場合には、令和7年(2025年)3月31日までは、減算は適用されない猶予期間となります。また、訪問系サービス、福祉用具貸与、居宅介護支援については、無条件で同じく令和7年(2025年)7月31日まで経過期間が設けられることになります。とは言え、令和7年(2025年)には、必ず全介護事業所は業務継続計画(BCP)を策定しなければ減算となります。
中小零細の介護事業所にとって、業務継続計画(BCP)の策定を行うためのノウハウが不足しており、準備には多くの手間もかかってしまいますが、大切なことは、減算対応のための形だけの業務継続計画(BCP)策定を行うのではなく、万一の際に備えた実効性のある業務継続計画(BCP)策定を行うことです。厚労省より示されている策定ガイドラインなどを参考にしながら、これからしっかりと策定準備を進めなければなりません。
斉藤 正行氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体