令和6年度介護従事者処遇状況等調査の実施と処遇改善のゆくえ

2024.09.27

令和6年度介護従事者処遇状況等調査が令和6年10月に行われることになります。調査の目的は「介護従事者の処遇の状況及び処遇改善加算の影響等の評価を行うとともに、介護報酬改定のための基礎資料を得ること」とされています。無作為に抽出された各事業所・施設に調査票が送られます。処遇改善加算の取得状況や、分配方法(基本給への配分、手当としての配分、一時金での配分の確認など)や、昨年度と比較した処遇状況などの調査データが取りまとめられることとなります。調査結果の公表は来年3月ごろを予定されています。

令和6年度介護報酬改定において、処遇改善加算は6月より、従来の3種類の加算が1本化され、新しい1つの加算となりました。計画書や実績報告書の作成時間は大幅に短縮されることとなり、加算の算定率が高まっているかどうかは、調査結果の1つの大きな注目ポイントとなります。加えて、新しい加算では単位数も大幅に引き上げられることとなりました。令和6年度介護報酬改定の全体改定率は1.59%であり、その大部分を占める0.98%が処遇改善加算の引き上げ分に割り振られています。政府は、この引き上げ分は令和6年度と令和7年度の2年分の予算としており、介護職員の賃上げの効果は、令和6年度は2.5%、令和7年度は2.0%と想定しています。そのため、今年度に限り、処遇改善加算で取得した介護報酬を今年度で全額職員に配分せずに内部留保し、来年度と2年分で加算報酬額を全て配分することが可能なルールとされています。この辺りの配分状況がどのようになっているのかも調査結果の注目ポイントの1つとなります。

引き続き社会情勢は物価高騰が続いており、賃金価値が目減りしていることからも、他産業においては、大きな賃上げが行われています。今後の介護従事者の処遇改善のゆくえは、この調査結果を踏まえた上で、令和8年度に追加での処遇改善の検討が行われることなります。令和8年度に、臨時の報酬改定か、交付金等による対応が行われ、その状況を踏まえて令和9年度介護報酬改定で更なる対応が行われることとなります。

しかしながら、他産業では、大企業は年度で5%を超える水準の賃上げとなっており、中小企業でも3%を超える水準となっています。従来から他産業の所得と介護職員の所得には年収100万円程度の大きな差が生じており、この差が更に拡大しかねない状況にあります。また、この10月より最低賃金は過去最大上げ幅となる全国平均51円の引き上げも行われます。このような状況を踏まえると、令和8年度の対応まで何の措置も行われなければ、他産業との所得に更なる大きな差が生じることとなり、介護現場の人手不足がいっそう深刻な事態となってしまいます。令和8年度の対応の前に、この年末に取りまとめられることになる令和6年度の補正予算や、令和7年度の予算策定においても、介護現場の賃上げに繋げる政策がもとめられるのではないでしょうか。今後の動向を注視していきたいと思います。

 

斉藤 正行氏

一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長

現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体

http://kaiziren.or.jp/