居宅介護支援・ケアマネジャーを取り巻く最新動向
最新のデータから示されている居宅介護支援及びケアマネジャーを取り巻く環境は、いっそう厳しい状況にあると言えます。今年4月時点での居宅介護支援の事業所数は3万6459事業所となり、昨年より738減少しています。この事業所数の減少は6年連続であり、2018年の4万65事業所からは3500以上減少していることになります。管理者要件である主任ケアマネジャーの確保や、そもそものケアマネジャーのなり手不足の影響であると考えられます。また、本年10月13日に実施された介護支援専門員実務研修受講試験の受験者数も昨年度より2776人少なくなるなど、その影響は深刻さを増しています。今後も要介護高齢者は増加し続ける中で、介護保険制度の根幹ともいえる居宅介護支援事業所及びケアマネジャーの確保は、業界の大きな課題の1つであります。
そのような情勢を踏まえて、厚生労働省は今年度より、「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」を設置し、4つの検討事項に基づく議論が行われており、いよいよ報告書の取りまとめに向けた最終段階となってきています。4つの検討事項は、「①ケアマネジャーの業務の在り方について」では、居宅介護支援のケアマネジャーが、本来業務であるケアマネジメント業務以外に、要介護高齢者の暮らしをサポートするためのあらゆる相談を受けるケースが散見されており、シャドーワークとも言われる附帯業務と本来業務の整理をある程度行う方向性で議論されています。また、主任ケアマネジャーの役割を見直し、管理者の配置要件の検討も議論されています。「②人材確保・定着に向けた方策について」は、最大の課題とも言えるケアマネジャーのなり手不足の解消に向けて、居宅介護支援への処遇改善加算の創設を求める声が検討会でも上がっています。ただし、予算確保含めて今後の大きな検討事案となります。加えて、ケアマネジャー受験資格要件の見直しの方向性が示されており、受験者数の増加を目指す方向性が示されています。「③法定研修の在り方について」は、現場から多数の見直しや廃止の声が上がっている更新制度と更新研修について、抜本的な内容の見直しの必要性を多くの検討会委員から指摘されています。「④ケアマネジメントの質の向上に向けた取り組みの促進」は、認知症やお1人様高齢者への対応力強化、公正中立なケアマネジメントの在り方、生産性向上・DX推進の効果的な進め方が検討されています。
この検討事項の中でも、とりわけ「更新研修の在り方」は大きな注目を集めています。全国のケアマネジャーから更新研修廃止の署名活動も行われていましたが、現時点では廃止の議論は深まっておらず、更新制度・更新研修を存続した上で、諸課題への抜本的な見直しの議論が行われています。
具体的には、
- 研修時間数の簡素化
- 研修カリキュラムの見直し
- オンラインやアーカイブ研修等による研修開催日の選択制の導入
などの方向性が検討会でも議論されています。今後の報告書の取りまとめ内容を注目するとともに、制度見直しへ大きな期待を寄せたいと思います。
加えて今後、居宅介護支援は、来年より「ケアプラン作成の利用者負担の導入」について本格的な議論が開始されることとなり、来年末には方向性が固まってくることになります。居宅介護支援・ケアマネジャーに関する今後の動向には目を離すことはできません。
斉藤 正行氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体