財務省「財政審」による2027年改定に向けた報酬抑制の提言

2024.11.22

令和6年11月13日に開催された財務省による財政制度等審議会財政制度分科会(財政審)において社会保障をテーマに、次期介護保険法改正及び報酬改定等に対する意見提言が行われました。

毎年春と年末の時期に社会保障をテーマとした提言が行われますが、今回も介護政策に対して11の提言が行われています。

  1. 訪問介護事業への処遇改善加算の取得促進と人材確保策の推進
  2. 経営の協働化・大規模化の推進と特養等における人員配置要件の柔軟化
  3. 生産性向上や職場環境改善の好事例の横展開の推進
  4. 人材紹介会社に対する指導監督の強化とハローワークの充実
  5. 利用者の2割負担の対象拡大の早期実現
  6. 老健・介護医療院の多床室の室料負担の見直し
  7. 集合住宅に対する居宅療養管理指導の適正化
  8. 居宅介護支援のケアプランの利用者の自己負担の導入
  9. 要介護1・2の軽度者における訪問介護・通所介護の総合事業への移管
  10. 介護保険外サービスのローカルルールの柔軟化
  11. 地域資源の有効活用に向けた自治体による自立支援・重度化防止等へのインセンティブの推進

基本的には、報酬削減に繋がる厳しい指摘がほとんどですが、今回は、訪問介護に対する提言や、人材紹介会社の規制強化の内容は、介護関係者の多くが共感を得ることの出来る内容も含まれています。また、訪問介護に対する提言や、好事例の横展開については、今回新たに示された提言内容でありますが、その他は従来から提言されてきた内容を改めて盛り込んだ形となっています。

この中で、私が特に注目したい点が3つあります。1つは、今回新たに提言された訪問介護に対する内容です。改革の方向性案として「訪問介護事業については、引き続き処遇改善加算の確実な取得を促しつつ、人手不足に対しては現場のニーズ等を踏まえた人材確保策を推進すべき。」とされており、令和6年度の介護報酬改定によるマイナス影響への配慮が示されています。これは、訪問介護のマイナス改定は財務省主導によるものでは無いと表明しているとも言えます。2つめは、いよいよ来年より本格議論されることとなる次期介護保険法改正に関する提言です。内容に目新しさはありませんが、利用者の2割負担の対象拡大、ケアプランの利用者負担の導入、訪問介護における生活援助等の軽度者改革、老健等の多床室の室料負担の見直しについて、今後の議論の最大のテーマともなり、改めて財務省より早期実現を迫る形となっています。3つめは、集合住宅に対する提言です。今年4月の財政審では、他の提言よりも多くのページを割いており、財務省が特に注力していることがうかがい知れましたが、今回は、集合住宅に対しては、居宅療養管理指導の適正化のみの内容となっています。これは、けっして集合住宅に対する提言を緩めたことを意味するのではなく、むしろ集合住宅に対する過剰サービス問題(いわゆる囲い問題)は、6月に閣議決定された骨太方針2024の中に、はっきりと対策を講じることが記載されており、財務省としてはこのタイミングで新たに提言する必要のない、すでに決定された事項であると考えられているのではないでしょうか。集合住宅に対する対応は、今後は、報酬改定の議論が本格化するのが再来年以降であります。適正化の流れは避けがたいですが、今後の焦点は、その適正化の度合いがどの程度まで踏み込むこととなるのか?適切なケアマネジメントをどのように定着させるかが重要なポイントになると思います。

いずれにせよ、この年末の時期に財務省が提言した今回の内容も踏まえて、年明けからの法改正そして、その後の報酬改定の議論が、今後本格化してまいりますので、議論のゆくえは大注目となります。

 

斉藤 正行氏

一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長

現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体

http://kaiziren.or.jp/