追加経済対策における介護分野の支援策について
令和6年11月22日に、政府は「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」を閣議決定しました。これは、令和6年度の補正予算による追加の経済対策となります。物価高への対応などを柱として、事業規模は39兆円程度となる大型の補正予算となります。12月に国会で補正予算案が審議され、可決される予定となります。
この追加経済対策において、介護分野に対する支援策も一部盛り込まれています。具体的には、『足元の人材確保の課題に対応する観点から、令和6年度報酬改定において講じた医療・介護・障害福祉分野の職員の処遇を改善するための措置を確実に届け、賃上げを実現するとともに、生産性向上・職場環境改善等による更なる賃上げ等を支援することとし、職員の負担軽減・業務効率化、テクノロジー・ICT機器の活用、経営の協働化、 訪問介護の提供体制の確保、障害者就労施設の経営改善といった取組を支援する。』と記載されています。
まずは、介護従事者への処遇改善の方向性が示されました。これは令和6年度の介護報酬改定における処遇改善加算の1本化と単位数の上増しに加えて、来年(令和7年)以降での更なる処遇改善に繋がることとなります。合わせて追加経済対策の欄外に記載されている内容と合わせると、この機会に、1本化された処遇改善加算の算定率を高めるための要件緩和の措置が講じられる可能性も示唆しています。
この後、補正予算案が可決されれば、いつ頃?どのような金額規模で?どのような条件や中身となるか?などの細部が詰められていくことになります。その際に、居宅介護支援のケアマネジャーに対する処遇改善のゆくえも気になるところですが、こちらは、別途「ケアマネジメントの諸課題に関する検討会」における中間報告書の内容を踏まえた対応として進んでいくので、時期的にはこの補正予算での対応には間に合わない可能性はあると思います。
合わせて、事業者に対しては、物価高への補助事業の追加や、テクノロジー活用への補助などが想定されます。加えて、注目すべきは、令和6年度介護報酬改定で基本単位がマイナスとなった訪問介護に対する提供体制の確保支援が示されている点です。具体的な支援策は、これから詰められることになると思いますが、すでに厚労省より来年度(令和7年度)概算予算の要求において、訪問介護の支援策3つが示されており、その支援策の先行的な対応となる可能性が高いと思います。具体的には、①訪問介護等サービス提供体制確保支援事業として、人材確保に向けた研修体系の整備や、ヘルパー同行支援に係るかかり増し経費等の予算。②介護人材確保のための福祉施策と労働施策の連携体制の強化として、介護人材確保に向けた複合的な支援策の予算。③ホームヘルパーの魅力発信のための広報事業として、ヘルパーの魅力発信への広報を行っていく予算。となります。①②の予算は訪問介護だけに限定したものではないと想定されており、この補正予算における対策においても訪問介護に限定した支援策となるか?それとも他のサービス含めた幅広い支援策となるか?1つの大きなポイントであると思います。
いずれにしても、今後の議論のゆくえと、具体的な支援策の中身が示されることに注目していくとともに、速やかな支援策が実行されることを期待したいと思います。合わせて、不足と感じる支援については来年度(令和7年)予算においての更なる支援を期待したいと思います。
斉藤 正行氏
一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長
現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体