介護業界2024年の振り返りと2025年の展望

2024.12.27

今年は1年間ありがとうございました。本年最後の「斉藤正行のはなまる介護」のコラム寄稿となります。

今回は、介護業界の2024年を振り返るとともに、2025年の業界展望をお伝えしたいと思います。2024年は、業界にとっては何といっても報酬改定の年でありました。3年に1度の改定。6年に1度の同時改定となる令和6年度介護報酬改定が4月と6月に行われました。ご承知の通り、全体改定率は+1.59%(処遇改善加算が0.98%)となり、過去2番目の上げ幅となる大きなプラス改定となりました。また、見直しの中身についても、

  1. 地域包括ケアシステムの深化・推進
  2. 自立支援・重度化防止に向けた対応
  3. 良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり
  4. 制度の安定性・持続可能性の確保

を4つの基本的な視点として、将来の大きな変革へと繋がる節目となる重要な改定となりました。

一方で、2024年は介護業界にとっては総じて厳しい1年間であったと言わざるをえません。改定率も全体では、大きなプラス改定であるものの、物価高や賃上げの情勢を鑑みると、決して十分な水準と言える上げ幅ではありません。また、サービスごとの濃淡も大きく、施設・居住系に手厚く、在宅サービスにとっては厳しい結果となり、特に訪問介護をはじめとする訪問系3サービスは、まさかの基本報酬単位のマイナスとなりました。

物価高による事業者のコスト増による収益への悪影響や、賃上げの情勢は他産業に遅れをとってしまっており、他産業と介護従事者の平均賃金も差が拡大しはじめました。ただでさえ人材確保が困難な状況での、この賃金格差は、これからの介護人材確保に向けた将来に、暗い影を落とすことになりかねません。採用費・人件費の増加にも拍車はかかっており、介護事業者の収益環境は大変厳しい状況にあります。また、人手が確保できずに事業継続がままならないケースも増え始めています。このような情勢の中で、2024年は民間調査会社によると、過去最多の介護事業者の倒産件数となってしまっています。2025年もこの物価高・賃上げの情勢は続くものと予測されますが、何としても状況を打開し、2025年は業界にとって晴れやかな年にしたいものです。

加えて、2024年は3年ごとの法改正・報酬改定の議論の谷間の年であり、その他の制度改革が行われた年ともなりました。具体的には、6月に「外国人介護人材の業務の在り方に関する検討会 中間まとめ」が示され、来年度(2025年4月以降)に、特定技能による訪問系サービスへの外国人の解禁の方向性が示されました。また、12月に「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会 中間整理」が示され、居宅介護支援のケアマネジャーの業務整理や、処遇の改善、更新研修の見直しなどの方向性が記されています。その他にも、財務省による集合住宅をはじめとする適正化に向けた意見提言や、ホスピス型有料老人ホームに対するメディア報道による影響など、業界では盛沢山のトピックスの1年となりました。

最後に2025年に向けた展望をお伝えしたいと思います。2025年は何と言っても次期介護保険法改正に向けた議論が、介護保険部会において本格化する年となります。「利用者2割負担の対象拡大」「ケアプランの自己負担設定」「軽度者改革」「老健等の多床室の室料負担」について、議論が行われ結論を出すことがすでに方針として示されています。年末には方向性が固まることとなります。更には、来年の後半からは、次期報酬改定に向けた動きも出始めてくることになります。令和9年度介護保険法改正・報酬改定に向けた議論がスタートをする大変重要な年となります。加えて、賃上げの情勢に対する更なる追加支援を得ることが出来るのかどうかも来年の大きなポイントになると思います。事業者の経営環境が急速に良い流れになることは考え難いですが、それでも、報酬改定の対応もひと段落を終えて、経営改革や生産性向上に向けた体制を整えるなどして、将来の大改革へと繋げる大切な1年とすることが事業者にも必要となります。

2025年がどのような1年となるのか、今はまだわかりませんが、業界にとっても、皆さんにとっても素晴らしい1年となることを願います。

 

斉藤 正行氏

一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長

現場主導による制度改革の実現に向けて介護及び障害福祉事業者による大同団結を目指す横断型(法人種別・サービス種別)の事業者団体

http://kaiziren.or.jp/