2024年介護報酬改定 介護老人保健施設の新設加算解説
令和6年度介護報酬改定における改定事項については、全体で125項目もありました。全サービス共通の改定項目としては、「人員配置基準における両立支援への配慮」「管理者の責務及び兼務範囲の明確化等」「いわゆるローカルルールについて」「『書面掲示』規制の見直し」などがありました。また、LIFE関係の改定や介護職員の処遇改善加算の改定などの大きな改定もありましたが、今回は報酬上「新規加算(廃止)」となったものについて、改めて確認していきたいと思います。
介護老人保健施設の新設加算概要
介護老人保健施設は、全体で35項目の見直し項目があったので、今回の改訂では全てのサービスの中で一番改訂項目が多いサービスとなりました。また、基本単位数の改定としては、2.49%のプラスということで、すべてのサービスの中で介護老人福祉施設と同様に最大級の上げ幅ということになりました。背景としては、介護老人福祉施設と同様ですが、『令和5年度介護事業経営実態調査の結果』では、介護サービスごとの令和4年度決算における税引前収支差率(コロナ関連補助金・物価高騰対策関連補助金を含まない)でみていくと、介護老人保健施設はマイナス1.1%と、前年度から2ポイント以上数値を下げ、赤字の結果となったことが大きな要因の一つであると推察されます。収支差率がマイナスとなったのは、制度開始からみて初めてのことで人件費や光熱水費の増加などが影響し、施設経営の厳しい状況が明るみになりました。単位の増加には、新たに作られた加算もたくさんあり。この加算を算定していくことによって、しっかりとした収益体制を確保していくということが非常に重要です。
35項目のうち新加算(廃止)については、以下の通りです。
- 協力医療機関との定期的な会議の実施(協力医療機関連携加算)
- 入院時等の医療機関への情報提供(退所時情報提供加算(Ⅱ))
- 介護老人保健施設における医療機関からの患者受入れの促進(初期加算(Ⅰ))
- 高齢者施設等における感染症対応力の向上(高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅰ)(Ⅱ))
- 施設内療養を行う高齢者施設等への対応(新興感染症等施設療養費)
- 業務継続計画未策定事業所に対する減算の導入(業務継続計画未実施減算)
- 高齢者虐待防止の推進(高齢者虐待防止措置未実施減算)
- 認知症対応型共同生活介護、介護保険施設における平時からの認知症の行動・心理症状の予防、早期対応の推進(認知症チームケア推進加算(Ⅰ)(Ⅱ))
- 介護老人保健施設における認知症短期集中リハビリテーション実施加算の見直し(認知症短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅰ))
- 介護保険施設におけるリハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の一体的取組の推進(リハビリテーションマネジメント計画書情報加算(Ⅰ))
- 介護老人保健施設における短期集中リハビリテーション実施加算の見直し(短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅰ))
- 退所者の栄養管理に関する情報連携の促進(退所時栄養情報連携加算)
- かかりつけ医連携薬剤調整加算の見直し(かかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅰ)ロ)
- 介護ロボットやICT等のテクノロジーの活用促進(生産性向上推進体制加算(Ⅰ)(Ⅱ))
- 認知症情報提供加算の廃止
- 地域連携診療計画情報提供加算の廃止
- 長期療養生活移行加算の廃止
それぞれについて、ポイントについて概要を説明していきたいと思います。
各新設加算・減算の詳細
協力医療機関との定期的な会議の実施(協力医療機関連携加算)
単位は以下のとおりです。
(1) 以下の①~③の要件を満たす場合100単位/月(令和6年度) 50単位/月(令和7年度~)(新設)
(2) それ以外の場合 5単位/月(新設)
協力医療機関と効果的な連携体制を作るために、入所者の現病歴などの情報を共有する会議を定期的に開催することを評価する新しい加算を設けました。要件としては、協力医療機関と、入所者の同意を得た上で、病歴などの情報を共有する会議を定期的に開催していることが新たに求められています。また、協力医療機関の要件としては、
② 高齢者施設等からの診療の求めがあった場合において、診療を行う体制を常時確保していること。
③ 入所者等の病状が急変した場合等において、入院を要すると認められた入所者等の入院を原則として受け入れる体制を確保していること。
となっており、地域によっては大変厳しい要件となっております。
入院時等の医療機関への情報提供(退所時情報提供加算(Ⅱ))
単位は以下のとおりです。
入所者が医療機関へ退所する際に、生活状況や認知機能に関する情報を提供することをさらに促進するために、新しい評価区分を設けられました。また、入所者が居宅へ退所する際、退所後の主治医に診療情報を提供する現行の加算についても、医療機関へ退所する場合と同様に、生活支援上の注意点などの情報提供を算定要件に加えました。要件としては、医療機関へ退所する入所者について、退所後の医療機関に紹介する際、入所者の同意を得て、心身の状況や生活歴に関する情報を提供した場合に、入所者1人につき1回だけ算定できることとなりました。
介護老人保健施設における医療機関からの患者受入れの促進(初期加算(Ⅰ))
単位は以下のとおりです。
入院による要介護者のADL(活動能力)の低下を防ぐため、急性期の医療機関から介護老人保健施設への受け入れを促進するために、介護老人保健施設の初期加算について、新しい評価区分を設けています。これには、地域医療情報連携ネットワークや急性期病床を持つ医療機関の入退院支援部門を通じて、施設の空室情報を定期的に共有し、入院日から一定期間内に退院した方を受け入れた場合が評価されます。
算定要件としては、急性期医療を行う病院の一般病棟に入院後30日以内に退院し、介護老人保健施設に入所した方について、1日ごとに所定の単位数を加算できます。ただし、初期加算(Ⅱ)を算定している場合は対象外となっています。介護老人保健施設が空室情報を地域医療情報連携ネットワークを通じて、地域の医療機関と定期的に共有していること。施設のウェブサイトで空室情報を定期的に公開し、急性期医療を担う複数の医療機関の入退院支援部門にも定期的に情報を提供していることが求められます。
高齢者施設等における感染症対応力の向上(高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅰ)(Ⅱ))
単位は以下のとおりです。
高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅱ) 5単位/月(新設)
高齢者施設では、施設内で感染者が発生したときに、医療機関と連携して療養を行い、他の入所者への感染拡大を防ぐ必要がありました。そのため、新しい加算を設けました。
- 新しい感染症が発生した際に、診療を行う医療機関と実際的な連携体制を構築すること。
- 新型コロナウイルスを含む一般的な感染症について、協力医療機関と診療対応を決めて、適切な対応ができる体制を構築すること。
- 感染症対策に関する研修に参加し、医療機関や地域の医師会から助言や指導を受けること。
また、感染者が発生したときの実地指導を受けることも評価することとなりました。
要件としては、加算(Ⅰ)は感染症法に基づく指定医療機関と、新興感染症発生時の対応体制を確保していること。協力医療機関と一般的な感染症の対応を取り決め、感染発生時に連携して適切に対応していること。医療機関や地域の医師会が行う感染対策の研修や訓練に、年1回以上参加すること。とし、加算(Ⅱ)では、医療機関から、3年に1回以上、施設内で感染者が発生した場合の感染制御に関する実地指導を受けることとしました。
施設内療養を行う高齢者施設等への対応(新興感染症等施設療養費)
単位は以下のとおりです。
新しい感染症のパンデミックが発生した際、施設内で感染した高齢者に必要な医療やケアを提供するため、感染対策や医療機関との連携体制を確保して、施設内で療養を行うことを新たに評価されることになりました。これにより、病床のひっ迫を避けることが期待されます。また対象となる感染症は、今後のパンデミック発生時に必要に応じて指定する仕組みとなっています。
要件としては、入所者が厚生労働大臣の定める感染症に感染した場合に、相談対応や診療、入院の調整を行う医療機関を確保し、その感染者に適切な感染対策を行いながら、介護サービスを提供した場合に、1カ月に1回、連続する5日を限度として算定できることとしました。
業務継続計画未策定事業所に対する減算の導入(業務継続計画未実施減算)
単位は以下のとおりです。
前回の令和3年度の介護報酬改定の時から猶予期間とされていましたが、感染症や災害が発生しても、必要な介護サービスを継続的に提供できる体制を整えるために、業務継続計画の策定を徹底することが義務化されました。もし感染症または災害、またはその両方に対する業務継続計画が未策定の場合、基本報酬が減算されることになりました。
要件としては、次の基準を満たしていない場合について減産されます。
- 感染症や非常災害が発生したときに、利用者へのサービス提供を継続し、非常時の体制で早期に業務を再開するための計画(業務継続計画)を策定すること。
- この業務継続計画に基づいて、必要な措置を講じること。
「必要な措置を講じること」とは、委員会の設置や方針、研修・シミュレーション・訓練・計画の見直しといったBCMが整っていないことです。ただ、令和7年3月31日までの間、感染症の予防及びまん延の防止のための指針の整備及び非常災害に関する具体的計画の策定を行っている場合には、減算を適用しないとされています。早期の体制整備が必要です。
高齢者虐待防止の推進(高齢者虐待防止措置未実施減算)
単位は以下のとおりです。
入所者の人権を守り、虐待を防ぐために、虐待発生や再発防止のための措置を講じることが求められました。これには、委員会の開催、指針の整備、研修の実施、担当者を定めることが含まれます。施設におけるストレス対策を含む高齢者虐待防止の取り組み例を集め、周知を図ることが求められました。また、国の補助を受けて都道府県が実施している事業において、ハラスメントやストレス対策に関する研修を実施できるようにしました。この事業の相談窓口は、高齢者本人や家族だけでなく、介護職員も利用できることを明確にし、高齢者虐待防止の施策を充実させることとしました。
要件としては、虐待の発生や再発を防止するため、以下のような措置が講じられていない場合について減算されることとなりました。
- 虐待防止対策を検討する委員会を定期的に開催し、その結果を従業者にしっかりと知らせること。(テレビ電話などを活用して開催することも可能。)
- 虐待防止のための指針を整備すること。
- 従業者に対して、虐待防止のための研修を定期的に実施すること。
- 上記の措置を適切に行うための担当者を配置すること。
認知症対応型共同生活介護、介護保険施設における平時からの認知症の行動・心理症状の予防、早期対応の推進(認知症チームケア推進加算(Ⅰ)(Ⅱ))
単位は以下のとおりです。
認知症チームケア推進加算(Ⅱ)120単位/月(新設)
※認知症専門ケア加算(Ⅰ)又は(Ⅱ)を算定している場合においては、算定不可。
認知症の行動や心理症状(BPSD)を未然に防ぐ、または早期に対応する取り組みを平時から進めるため、新しい加算を設けました。
要件としては、加算(Ⅰ)では、
(2)認知症の行動・心理症状を予防し、早期に対応するための専門研修を修了した人を1名以上配置し、複数の介護職員で対応するチームを組んでいること。
(3)対象者ごとに、認知症の行動・心理症状を計画的に評価し、その結果に基づいてチームケアを実施していること。
(4)認知症ケアに関するカンファレンス開催、計画作成、定期的な評価、ケアの振り返りや計画の見直しを行っていること。
となっており、加算(Ⅱ)では、
(Ⅰ)の基準(1)、(3)、(4)に適合すること、認知症の行動・心理症状の予防に貢献する専門研修を修了した人を1名以上配置し、複数の介護職員で対応するチームを組んでいることとなっています。
介護老人保健施設における認知症短期集中リハビリテーション実施加算の見直し(認知症短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅰ))
単位は以下のとおりです。
認知症の入所者が居宅での生活環境に対応したサービスを受けられるようにするため、現在の認知症短期集中リハビリテーション実施加算に、新たに居宅を訪問して生活環境を確認することを評価する区分を設けられました。その際、現行の加算区分については、新しい加算区分の取り組みを進めるために見直しを行いました。
要件としては、次の基準を満たす場合に1日ごとに所定の単位数を加算できます。
- リハビリを担当する理学療法士、作業療法士、または言語聴覚士が適切に配置されていること。
- リハビリを行う際、入所者の数が担当する療法士の数に対して適切であること。
- 入所者が退所後に生活する居宅や社会福祉施設を訪問し、その生活環境を踏まえてリハビリ計画を作成していること。
介護保険施設におけるリハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の一体的取組の推進(リハビリテーションマネジメント計画書情報加算(Ⅰ))
単位は以下のとおりです。
機能訓練、口腔、栄養を一体的に推進し、自立支援・重度化防止を効果的に進める観点から、以下の要件を満たす場合について評価する新たな区分が設けられました。
- ア.口腔衛生管理加算(Ⅱ)及び栄養マネジメント強化加算を算定していること。
- イ.リハビリテーション実施計画等の内容について、リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の情報を関係職種の間で一体的に共有すること。その際、必要に応じてLIFEに提出した情報を活用していること。
- ウ.共有した情報を踏まえ、リハビリテーション計画または個別機能訓練計画について必要な見直しを行い、見直しの内容について関係職種に対し共有していること。
となっており、さらに個別機能訓練加算(Ⅱ)を算定していること。となっています。
退所者の栄養管理に関する情報連携の促進(退所時栄養情報連携加算)
単位数は以下のとおりです。
介護保険施設から居宅や他の施設、医療機関に退所する際、栄養管理の情報が途切れないようにするために、管理栄養士が入所者の栄養管理情報を他の施設や医療機関に提供することを評価する新しい加算を設けられました。対象者は、厚生労働大臣が定める特別食を必要とする入所者となり、低栄養状態にあると医師が判断した入所者となります。主な算定要件としては、管理栄養士が、退所先の医療機関などに対して、その方の栄養管理に関する情報を提供すること。1カ月に1回を限度として所定の単位数を算定できることとなっています。
かかりつけ医連携薬剤調整加算の見直し(かかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅰ)ロ)
単位は以下のとおりです。
ポリファーマシー(多剤併用)の解消を進めるために、施設で薬剤の評価や調整を行った場合も評価する新しい区分を設けられました。また、入所前の主治医と連携して薬剤を評価・調整した場合は、より高く評価されるようになりました。
介護ロボットやICT等のテクノロジーの活用促進(生産性向上推進体制加算(Ⅰ)(Ⅱ))
単位は以下のとおりです。
生産性向上推進体制加算(Ⅱ) 10単位/月(新設)
介護現場で生産性を向上させるために、介護ロボットやICTなどのテクノロジーを導入後も継続的に活用することが評価されました。利用者の安全や介護サービスの質を確保し、職員の負担を軽減するための方策を検討する委員会を開催し、必要な安全対策を講じられ、見守り機器などのテクノロジーを1つ以上導入し、生産性向上ガイドラインに基づいた業務改善を継続的に行い、一定期間ごとにその効果を示すデータを提供することを評価する新たな加算が設けられました。さらに、前述の要件を満たし、提出したデータで業務改善の成果が確認された場合、見守り機器などのテクノロジーを複数導入し、職員間の適切な役割分担(介護助手の活用など)を行っていることを評価する上位の加算区分も設けられました。
要件としては、加算(Ⅱ)では
- 利用者の安全や介護サービスの質を確保し、職員の負担を軽減するための方策を検討する委員会を開催し、必要な安全対策を講じた上で、生産性向上ガイドラインに基づいた改善活動を継続的に行うこと。
- 見守り機器などのテクノロジーを1つ以上導入すること。
- 1年以内に1回、業務改善の取り組みによる効果を示すデータを厚生労働省へオンラインで提出すること。
となっており、加算(Ⅰ)では
- 加算(Ⅱ)の要件を満たし、そのデータによって業務改善の成果が確認されていること。
- 見守り機器などのテクノロジーを複数導入していること。
- 職員間で適切な役割分担を行い(介護助手の活用など)、取り組んでいること。
- 1年以内に1回、業務改善の取り組みによる効果を示すデータを厚生労働省へオンラインで提出すること。
となっています。ちなみに、提出が求められる業務改善の取り組みで求められるデータとしては、 加算(Ⅱ)では
- ア利用者の生活の質(QOL)の変化(WHO-5などを使用)
- イ総業務時間とその中の残業時間の変化
- ウ年次有給休暇の取得状況の変化
- エ心理的負担等の変化(SRS-18等)
- オ機器の導入による業務時間(直接介護、間接業務、休憩等)の変化(タイムスタディ調査)
となっています。さらに業務改善の取組による成果が確認されていることとは、ケアの質が確保(アが維持又は向上)された上で、職員の業務負担の軽減(イが短縮、ウが維持又は向上)が確認されることが求められています。
また、見守り機器などのテクノロジーとは、次のものを指しています。
- ア見守り機器
- イインカムなど、職員間の連絡を迅速化するICT機器
- ウ介護記録の作成を効率化するためのICT機器(介護記録ソフトやスマートフォンなど、データの入力から記録・保存・活用までを一体的に支援するもの)
となっており、複数のテクノロジーを導入する場合には、アからウまでのすべての機器の使用を求めています。アの機器はすべての居室に設置し、イの機器はすべての介護職員の使用が要件です。さらに、アの機器の運用については、事前に利用者の意向を確認し、その意向に応じて機器の使用を停止するなどの対応が認められています。
認知症情報提供加算の廃止
認知症情報提供加算について、算定実績等を踏まえ、廃止されました。
地域連携診療計画情報提供加算の廃止
地域連携診療計画情報提供加算について、算定実績等を踏まえ、廃止されました。
長期療養生活移行加算の廃止
長期療養生活移行加算について、介護療養型医療施設が令和5年度末に廃止となることを踏まえ、廃止されました。
介護老人保健施設に求められる今後の運営方針
他のサービスでも同時改定から医療との連携は中心的な改定項目でしたが、中でもより一層、医療機関との連携を強化し、入退所時の情報提供を促進することが期待されます。また感染症対策や業務継続計画を整え、高齢者虐待防止策を強化することや、認知症ケアを充実させ、リハビリと口腔ケア・栄養管理の推進が必要です。さらに、介護ロボットやICTを活用して生産性を向上させ、質の高いサービスを提供することが求められます。
神内 秀之介 氏
ふくしのよろずや神内商店合同会社 代表社員
様々な公職や現場での20年以上の経験から、介護経営のコンサルタント顧問契約。
経営者・理事長の経営参謀として、業務効率化から利用者・入居者獲得まで、様々なふくしやふくしみたいな経営のアドバイスを行なっています。