2024年介護報酬改定 介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者介護)の新設加算解説

2024.10.28

令和6年度介護報酬改定における改定事項については、全体で125項目もありました。全サービス共通の改定項目としては、「人員配置基準における両立支援への配慮」「管理者の責務及び兼務範囲の明確化等」「いわゆるローカルルールについて」「『書面掲示』規制の見直し」などがありました。また、LIFE関係の改定や介護職員の処遇改善加算の改定などの大きな改定もありましたが、今回は報酬上「新規加算(廃止)」となったものについて、改めて確認していきたいと思います。

介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者介護)の新設加算概要

特定施設入居者介護の基本報酬単位については、プラス0.75%で他のサービスと比較して全サービスの平均で微増でした。特定施設入居者生活介護の改定項目については、19項目ありました。そのうち新加算(廃止)については、以下の通りです。

  • 特定施設入居者生活介護等における夜間看護体制の強化(夜間看護体制加算(Ⅰ))
  • 入院時等の医療機関への情報提供(退居時情報提供加算)
  • 高齢者施設等における感染症対応力の向上(高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅰ)(Ⅱ))
  • 施設内療養を行う高齢者施設等への対応(新興感染症等施設療養費)
  • 業務継続計画未策定事業所に対する減算の導入(業務継続計画未実施減算)
  • 高齢者虐待防止の推進(高齢者虐待防止措置未実施減算)
  • 特定施設入居者生活介護における口腔衛生管理の強化(廃止)
  • 介護ロボットやICT等のテクノロジーの活用促進(生産性向上推進体制加算(Ⅰ)(Ⅱ))

それぞれについて、ポイントについて概要を説明していきたいと思います。

各新設加算・減算の詳細

特定施設入居者生活介護等における夜間看護体制の強化(夜間看護体制加算(Ⅰ))

単位は以下のとおりです。

夜間看護体制加算(Ⅰ) 18単位/日(新設)
夜間看護体制加算(Ⅱ) 9単位/日(変更)

夜間の看護職員の体制を強化し、医療的ケアが必要な方を積極的に受け入れるために、特定施設入居者生活介護における夜間看護体制加算を見直しました。新しく「夜勤や宿直の看護職員を配置する場合を評価する区分」を設けました。その際、現行の加算区分についても、新しい加算区分を推進するために、評価を見直しました。要件は以下の通りです。

  • 常勤の看護師を1名以上配置し、看護の責任者を決めます。
  • 夜勤や宿直を行う看護職員を1名以上配置し、必要に応じて健康管理を行う体制を確保します。
  • 重度化した場合の対応方針を定め、入居時に利用者やそのご家族に説明し、同意をいただきます。
より、重度の入居者を支援できるようにということで、これまで毎日配置を求めてはいませんでしたが、24時間365日体制を厚くすることに対して、上位の加算が新設されました。

入院時等の医療機関への情報提供(退居時情報提供加算)

単位は以下のとおりです。

退居時情報提供加算 250単位/回(新設)

入居者が医療機関へ退居した際に、生活支援上の注意点などの情報を提供することを評価する新しい加算を設けました。要件としては、医療機関へ退居する入居者について、退居後の医療機関に紹介する際、入居者の同意を得て、心身の状況や生活歴に関する情報を提供した場合に、入居者1人につき1回だけ算定できることとなりました。

高齢者施設等における感染症対応力の向上(高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅰ)(Ⅱ))

単位は以下のとおりです。

高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅰ) 10単位/月(新設)
高齢者施設等感染対策向上加算(Ⅱ) 5単位/月(新設)

高齢者施設では、施設内で感染者が発生したときに、医療機関と連携して療養を行い、他の入居者への感染拡大を防ぐ必要がありました。そのため、新しい加算を設けました。

  • 新しい感染症が発生した際に、診療を行う医療機関と実際的な連携体制を構築すること。
  • 新型コロナウイルスを含む一般的な感染症について、協力医療機関と診療対応を決めて、適切な対応ができる体制を構築すること。
  • 感染症対策に関する研修に参加し、医療機関や地域の医師会から助言や指導を受けること。

また、感染者が発生したときの実地指導を受けることも評価することとなりました。
要件としては、加算(Ⅰ)は感染症法に基づく指定医療機関と、新興感染症発生時の対応体制を確保していること。協力医療機関と一般的な感染症の対応を取り決め、感染発生時に連携して適切に対応していること。医療機関や地域の医師会が行う感染対策の研修や訓練に、年1回以上参加すること。とし、加算(Ⅱ)では、医療機関から、3年に1回以上、施設内で感染者が発生した場合の感染制御に関する実地指導を受けることとしました。

施設内療養を行う高齢者施設等への対応(新興感染症等施設療養費)

単位は以下のとおりです。

新興感染症等施設療養費 240単位/日(新設)

新しい感染症のパンデミックが発生した際、施設内で感染した高齢者に必要な医療やケアを提供するため、感染対策や医療機関との連携体制を確保して、施設内で療養を行うことを新たに評価されることになりました。これにより、病床のひっ迫を避けることが期待されます。また対象となる感染症は、今後のパンデミック発生時に必要に応じて指定する仕組みとなっています。

要件としては、入居者が厚生労働大臣の定める感染症に感染した場合に、相談対応や診療、入院の調整を行う医療機関を確保し、その感染者に適切な感染対策を行いながら、介護サービスを提供した場合に、1カ月に1回、連続する5日を限度として算定できることとしました。

業務継続計画未策定事業所に対する減算の導入(業務継続計画未実施減算)

単位は以下のとおりです。

所定単位数の100分の3に相当する単位数を減算(新設)

前回の令和3年度の介護報酬改定の時から猶予期間とされていましたが、感染症や災害が発生しても、必要な介護サービスを継続的に提供できる体制を整えるために、業務継続計画の策定を徹底することが義務化されました。もし感染症または災害、またはその両方に対する業務継続計画が未策定の場合、基本報酬が減算されることになりました。
要件としては、次の基準を満たしていない場合について減産されます。

  • 感染症や非常災害が発生したときに、利用者へのサービス提供を継続し、非常時の体制で早期に業務を再開するための計画(業務継続計画)を策定すること。
  • この業務継続計画に基づいて、必要な措置を講じること。

「必要な措置を講じること」とは、委員会の設置や方針、研修・シミュレーション・訓練・計画の見直しといったBCMが整っていないことです。ただ、令和7年3月31日までの間、感染症の予防及びまん延の防止のための指針の整備及び非常災害に関する具体的計画の策定を行っている場合には、減算を適用しないとされています。早期の体制整備が必要です。

高齢者虐待防止の推進(高齢者虐待防止措置未実施減算)

単位は以下のとおりです。

所定単位数の100分の1に相当する単位数を減算(新設)

入居者の人権を守り、虐待を防ぐために、虐待発生や再発防止のための措置を講じることが求められました。これには、委員会の開催、指針の整備、研修の実施、担当者を定めることが含まれます。施設におけるストレス対策を含む高齢者虐待防止の取り組み例を集め、周知を図ることが求められました。また、国の補助を受けて都道府県が実施している事業において、ハラスメントやストレス対策に関する研修を実施できるようにしました。この事業の相談窓口は、高齢者本人や家族だけでなく、介護職員も利用できることを明確にし、高齢者虐待防止の施策を充実させることとしました。

要件としては、虐待の発生や再発を防止するため、以下のような措置が講じられていない場合について減算されることとなりました。

  • 虐待防止対策を検討する委員会を定期的に開催し、その結果を従業者にしっかりと知らせること。(テレビ電話などを活用して開催することも可能。)
  • 虐待防止のための指針を整備すること。
  • 従業者に対して、虐待防止のための研修を定期的に実施すること。
  • 上記の措置を適切に行うための担当者を配置すること。

特定施設入居者生活介護における口腔衛生管理の強化(廃止)

すべての特定施設入居者生活介護で口腔衛生管理体制を確保するよう促し、入居者の状態に応じて適切な口腔衛生管理を求めるために、口腔衛生管理体制加算が廃止されました。そして、その算定要件を一定緩和し、基本サービスとして提供することとしました。その際に、3年間の経過措置期間を設けることとなっています。これまで加算項目でしたが、3年以内に基本サービスとして提供できる体制を整備しないと基準違反となってしまいます。これまで取り組んでいなかった施設は、計画的な体制整備が必要です。

介護ロボットやICT等のテクノロジーの活用促進(生産性向上推進体制加算(Ⅰ)(Ⅱ))

単位は以下のとおりです。

生産性向上推進体制加算(Ⅰ) 100単位/月(新設)
生産性向上推進体制加算(Ⅱ) 10単位/月(新設)

介護現場で生産性を向上させるために、介護ロボットやICTなどのテクノロジーを導入後も継続的に活用することが評価されました。利用者の安全や介護サービスの質を確保し、職員の負担を軽減するための方策を検討する委員会を開催し、必要な安全対策を講じられ、見守り機器などのテクノロジーを1つ以上導入し、生産性向上ガイドラインに基づいた業務改善を継続的に行い、一定期間ごとにその効果を示すデータを提供することを評価する新たな加算が設けられました。さらに、前述の要件を満たし、提出したデータで業務改善の成果が確認された場合、見守り機器などのテクノロジーを複数導入し、職員間の適切な役割分担(介護助手の活用など)を行っていることを評価する上位の加算区分も設けられました。

要件としては、加算(Ⅱ)では

  • 利用者の安全や介護サービスの質を確保し、職員の負担を軽減するための方策を検討する委員会を開催し、必要な安全対策を講じた上で、生産性向上ガイドラインに基づいた改善活動を継続的に行うこと。
  • 見守り機器などのテクノロジーを1つ以上導入すること。
  • 1年以内に1回、業務改善の取り組みによる効果を示すデータを厚生労働省へオンラインで提出すること。

となっており、加算(Ⅰ)では

  • 加算(Ⅱ)の要件を満たし、そのデータによって業務改善の成果が確認されていること。
  • 見守り機器などのテクノロジーを複数導入していること。
  • 職員間で適切な役割分担を行い(介護助手の活用など)、取り組んでいること。
  • 1年以内に1回、業務改善の取り組みによる効果を示すデータを厚生労働省へオンラインで提出すること。

となっています。ちなみに、提出が求められる業務改善の取り組みで求められるデータとしては
加算(Ⅱ)では

  • ア.利用者の生活の質(QOL)の変化(WHO-5などを使用)
  • イ.総業務時間とその中の残業時間の変化
  • ウ.年次有給休暇の取得状況の変化

加算(Ⅰ)では、上記ア、イ、ウに加え

  • ェ.心理的負担等の変化(SRS-18等)
  • オ.機器の導入による業務時間(直接介護、間接業務、休憩等)の変化(タイムスタディ調査)

となっています。さらに業務改善の取組による成果が確認されていることとは、ケアの質が確保(アが維持又は向上)された上で、職員の業務負担の軽減(イが短縮、ウが維持又は向上)が確認されることが求められています。

また、見守り機器などのテクノロジーとは、次のものを指しています。

  • ア.見守り機器
  • イ.インカムなど、職員間の連絡を迅速化するICT機器
  • ウ.介護記録の作成を効率化するためのICT機器(介護記録ソフトやスマートフォンなど、データの入力から記録・保存・活用までを一体的に支援するもの)

となっており、複数のテクノロジーを導入する場合には、アからウまでのすべての機器の使用を求めています。アの機器はすべての居室に設置し、イの機器はすべての介護職員の使用が要件です。さらに、アの機器の運用については、事前に利用者の意向を確認し、その意向に応じて機器の使用を停止するなどの対応が認められています。

介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者介護)に求められる今後の運営方針

以上、新しい加算について説明しましたが、新加算のみならず今回の報酬改定では、医療との名目的な連携ではなく、実際的実質的な連携、生産性向上が求められています。難しい困難と言って後回しにすると、次回改定の時には置いていかれます。小さくても一つひとつ計画的に取り組まれることが期待されます。また、今回説明できなかった住宅型有料老人ホームなどの在宅サービスとの組み合わせについては、在宅サービスのところでご説明したいと思います。

神内 秀之介 氏

ふくしのよろずや神内商店合同会社 代表社員

様々な公職や現場での20年以上の経験から、介護経営のコンサルタント顧問契約。
経営者・理事長の経営参謀として、業務効率化から利用者・入居者獲得まで、様々なふくしやふくしみたいな経営のアドバイスを行なっています。

https://jinnaisyouten.com