【千葉豪雨】介護施設に残した無残な爪痕 深刻な経営への打撃と影響の長期化
8月13日に千葉県を襲った記録的な豪雨。大きな被害を受けた医療法人社団敬徳会の介護老人保健施設へ伺って話を聞いた。
いまだ深い爪痕が残る現場で分かったのは、想像を超えた被害の深刻さだ。施設経営への影響が長期に及ぶ懸念も強い。
現場の担当者は下を向いておらず、再起に向けて力強く奔走している。ただし、「現実的に最も厳しいのはやはり資金面」と切実な胸中も明かした。
惨劇は瞬く間に起きた。局地的な大雨で一気に水かさが増し、1階の水位は最大80センチほどに到達。全館停電に加え、通信設備の浸水で電話も不通となった。
濁流が引いた後は一面泥まみれに。利用者の居室は2階以上だったため、不幸中の幸いで人的被害だけは免れた。ただし、1階の事務所や入浴設備、厨房設備、リハビリ関連設備などが壊滅的な打撃を受けた。
駐車場に停めていた送迎用などの車両は、16台すべてが廃車に。複数の職員の自家用車も被害を受けた。多数のパソコンや電話、ネット関連機器などの通信設備も浸水で壊れ、機能不全に陥っている。
変わり果てた施設の姿。事務長を務める高坂忍さんは、「まさか自分たちの施設が、という思い。前日までは普通に運営していた。この目で惨状を見た時は、本当に復旧できるのかと途方に暮れた」と当時を振り返る。
日々の食事を支える厨房のダメージも甚大だ。
多くの調理機器が濁流にのまれて故障し、3台あった大型の炊飯器は2台が使用不能となった。大型の冷凍・冷蔵庫も水に浮いて転倒するなど、惨たんたる状況に陥った。
食器洗い機や乾燥機には、モーター部分にまで泥が入り込んだ。下水のような悪臭がなかなか取れず、設備の刷新は不可避だという。多くの食器も水に浸かったため、衛生面から現在も使い捨てのプラスチック容器などで食事を提供している。
また、倉庫に置いていたおむつなど衛生用品の備品類も汚水を吸い、根こそぎ廃棄処分となった。
入浴設備は給水ポンプやボイラーが水没して破損。発災以降、入所者は浴槽を使った入浴を一切行えていない。現在は清拭やドライシャンプーでしのぐ厳しい対応が続く。近隣施設の協力を得て、少人数のピストン輸送によるシャワー浴の機会を作る計画を練るなど、職員が懸命に手探りの支援にあたっている。
同様に、機能訓練の設備も大きな被害を受けた。関連機器の過半数が水没し、内部に泥が侵入して稼働が停止。これらを用いた専門的なリハビリは休止を余儀なくされ、居室フロアでの歩行訓練などで機能の低下を防ぐのが精一杯だ。
フロア間の移動に欠かせないエレベーターも浸水した。底部ピットに泥水が溜まり、2ヵ所でまったく動かせない状況になったという。
稼働が止まった数日間は、職員が利用者を背負って階段を昇り降りするほかなかった。その後、溜まった泥水を抜くなど業者による迅速な復旧措置が奏功。業者の点検・安全確認を経て、老健の建屋では稼働を再開させることができた。
一方、併設する複合施設のエレベーターは現在も完全に停止したままだ。2階に入るデイサービスなどは利用者がフロアへ移動する手段が絶たれ、他の設備の被害も相まって休業に追い込まれている。
重くのしかかるのは影響の長期化だ。壁や壁紙、床材が水を吸って変形したり剥がれたりするなど、建物は細部に多くのダメージを受けた。今後、時間の経過とともに劣化が進行すれば修繕が必要となる見通しで、そのたびに経費がかかってくる。
安全面・衛生面も含めて必ず回復できるものの、不安の払拭や信頼の回復、風評被害といった面で懸念も拭えないという。
事業の正常化への道のりは前途多難と言うほかない。併設するデイサービス・デイケアはすべて完全に停止中で、再開の見通しは不透明なままだ。数ヵ月間の休業は確実な情勢で、「なんとか11月末には復旧の目途を立てたい」と必死の青写真を描く。
車両を失った訪問看護の運営も不安定化した。事業の停止・縮小が長引けば、その間に利用者が他の事業所へ移ってしまう恐れもある。終わらない復旧作業のかたわらで、職員がケアマネジャーや利用者・家族に再建への熱意、プロセスなどを説明しているが、やはり一定の影響は避けられそうもない。
職員の疲弊も心配される。高坂事務長に思いを聞くと、「我々が前を向いて、必ず完全に復旧させると皆を引っ張っていくしかない」と力強く語り、逆境に屈しないポジティブな姿勢を決して崩さなかった。その一方で、次のように本音をこぼした。
「もちろん心配がないわけではない。行政による支援などもあるが、最も切実なのはやはり最終的に資金面ということになる」
提供元:介護ニュースJoint