【要警戒】LIFE関連加算、運営指導で報酬返還になる盲点 「送信完了=安心」の落とし穴=小濱道博
科学的介護情報システム(LIFE)は、利用者の状態やケアの内容をデータとして国に提出し、その結果を介護現場にフィードバックすることで、介護の質を高めていく仕組みである。【小濱道博】
2021年度の介護報酬改定で本格的に導入され、現在では科学的介護推進体制加算をはじめ、個別機能訓練、ADL、褥瘡、排せつ、栄養、リハビリテーションなど、多くの加算にLIFEへのデータ提出が組み込まれている。
ここで注意したいのが、最近の運営指導におけるLIFE関連加算に対する行政のチェックである。
LIFEにデータを送信しているから加算を算定できる、という理解では不十分である。最近の運営指導では、データ提出だけでなく、
その加算に必要な評価、計画、記録、見直しなどが適切に行われているか
まで確認される。
つまり、問題は「LIFEに送ったか」だけでなく、「加算の要件を一連の業務として実施しているか、活用しているか」である。
◆ 報酬返還につながりやすい理由
LIFE関連加算には、それぞれ細かな算定要件が定められている。
たとえば、利用開始時などの所定の時期に評価を行い、その内容を計画に反映し、一定期間ごとに再評価を行う。そして必要な情報を定められた期限までにLIFEへ提出する。加算によっては、フィードバックされた情報を活用してケアを見直すというPDCAの実施も求められる。
そのため、LIFE上ではデータ提出が確認できても、事業所側の記録を確認すると、評価日が確認できない、計画とのつながりがない、必要な頻度で評価していない、提出期限を満たしていない、といった問題が見つかることがある。
この場合、「入力を忘れていただけ」という話では済まない。算定要件そのものを満たしていなかったと判断されれば、過誤調整などによって介護報酬の返還が必要になる可能性がある。
特に危険なのは、介護記録ソフトからCSVを作成してLIFEへ送信すること自体が、加算の算定要件を満たしている証明になるという思い込みである。介護記録ソフトはデータ提出を支援してくれるが、算定要件を自動的に保証してくれるものではない。
これから事業所が特に確認すべきなのは、LIFEへ提出した情報と事業所に残されている記録との整合性である。
利用者のADL、栄養状態、口腔状態、褥瘡、排せつなどについてLIFEへ数値を提出しているのであれば、その数値をどのように評価したのかが事業所の記録から説明できなければならない。
運営指導を受けてから過去の記録を探すのでは遅い。少なくとも現在算定しているLIFE関連加算について、
「誰が」「いつ」「何を評価し」「どの計画に反映し」「いつLIFEへ提出したのか」を利用者単位で追える状態にしておく
必要がある。
LIFEの管理を単なる「送信作業」と考えず、「加算算定の証拠を管理する業務」と捉え直すことが重要である。
◆ 国の議論の方向性
こうした中、9月3日の審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)では、来年度の介護報酬改定に向けてLIFEのあり方が改めて議論された。
現在、LIFEへの情報提出を求める加算は17種類あり、加算ごとに提出項目や要件が設定されている。その結果、似た情報を何度も入力するなど、現場の負担が大きくなっていることが厚生労働省から示された。
そこで検討されているのが、LIFE関連加算の体系そのものの整理である。
科学的介護推進体制加算をベースの「1階部分」とし、その上にリハビリテーション、個別機能訓練、褥瘡、排せつなど専門分野の「2階部分」を置く考え方が示されている。重複するデータ提出を整理し、現場の負担を減らすことが狙いである。
一方で、LIFEを使っているだけでは十分でないという課題も明確になっている。
厚生労働省の資料では、フィードバックの閲覧や活用が十分に進んでいない実態が示された。そして、この部分が運営指導で指摘され、報酬返還の指導につながってきている。
今、国が目指しているのは
「データを集めるLIFE」から「データを介護に活用するLIFE」への転換
である。
◆ 今すぐ行うべきことは「自主点検」
来年度改定を待ってから対応するのでは遅い。現在算定しているLIFE関連加算について、まず自主点検を行うべきである。
確認すべき中心は、LIFEへの提出実績だけではない。以下のポイントを確認することが欠かせない。
- 算定開始月から現在までについて、必要な評価が行われているか
- フィードバックを活用して計画の見直しを行っているか
- 必要な計画が作成されているか
- 評価と計画が連動しているか
- 所定の頻度を守っているか
- 提出期限を守っているか
- それらを証明する記録が残っているか
特に長期間算定している事業所では、1人の利用者の不備が数ヵ月、場合によっては長期間に及ぶ報酬返還につながる可能性があるため、早期発見の意味は大きい。
LIFEは今後なくなる仕組みではない。国の議論の動向を見る限り、むしろ来年度改定では体系を整理したうえで、科学的介護をさらに進める方向にある。
だからこそ今必要なのは、新しい加算を取ることよりも、
まず現在取っている加算が本当に算定要件を満たしているかを確認すること
である。
「LIFEに送信できているから大丈夫」から、「運営指導で根拠を説明できるから大丈夫」へ。この意識の転換が、これからのLIFE対策の出発点である。
提供元:介護ニュースJoint