ケアマネのシャドウワークはなくなるか 身寄りのない高齢者の支援が全国で制度化 大きな前進と残る課題

2026.09.17

地域で身寄りのない高齢者が増えていくなか、シャドウワークを抱え込むケアマネジャーに重い負担がのしかかっている。

果たして状況は良くなっていくのだろうか。今年6月の社会福祉法などの改正は、一部の関係者の間で「画期的」と受け止められている。

自身でも株式会社あかり保証で終身サポート事業を運営し、高齢者の身元保証や生活支援などに詳しい清水勇希弁護士に、どう捉えているか尋ねた。

業界団体の「全国高齢者等終身サポート事業者協会」の理事も務める清水氏は、今回の法改正を「大きな前進。ただ、これで全て解決とはいかない」とみる。

法改正の意義と残された課題、これからケアマネジャーに求められる視点などを学ぶため、詳しく話を聞いた。

清水勇希弁護士 株式会社あかり保証代表取締役 全国高齢者等終身サポート事業者協会理事

◆ 身寄りがないこと、それ自体を支える

「非常に意義のある法改正」。清水氏はそう言葉に力を込めた。

これまでも、認知症の高齢者など判断能力が不十分な人に対しては、日常生活を支える制度的な枠組み(第2種社会福祉事業)があった。

今回、政府はこうした制度を拡充。頼れる身寄りがいない高齢者らも、新たに対象に含める判断を下した。また、福祉サービスの利用援助や書類の預かり、金銭管理といった日常生活の支援に加えて、

  • 入院・入所の手続き

手続き支援、緊急連絡先の提供、費用の支払い代行など

  • 死後事務

葬儀・納骨、家財処分の契約手続き、行政への届出など

なども行うことにした。資力など一定の要件に該当する人に対しては、無料・低額でサービスを提供していく。サービスの主な担い手としては、例えば社会福祉協議会などが想定されている。

* こうした新たな事業の施行時期は、今年6月25日の改正法の公布から2年以内に政令で定める日とされている。

画期的なのは、「判断能力が不十分かどうか」という従来の尺度にとどまらず、頼れる身寄りがいないことで生じる高齢期の困難そのものを、国が制度上の支援対象として正面から捉えたことだ。

今の地域では、行き場のない高齢者をケアマネジャーやホームヘルパー、民生委員らが放っておけず、業務の範囲を超えてまで支援を引き受けている。

清水氏は、そうした「どこにも持っていけないケース」に光が当たったこと、制度的な受け皿を設けようという趣旨の仕組みが産声を上げたことが、大きな前進だと解説した。

◆ 誰が、どこまでやるのか

清水勇希弁護士 株式会社あかり保証代表取締役 全国高齢者等終身サポート事業者協会理事②

もちろん、すぐに全てが解決するわけではない。

例えば、高齢者の身元保証の問題はなお残る。新たな制度は入退院の手続き支援などを行うものの、身元保証そのものまでを担う仕組みではない。

清水氏は、本人にとって切実なのは「入院するとき、介護施設に入るときに身元保証を求められたらどうするか」という心配だと指摘する。こうした不安に対応できる環境の整備はもちろん、身元保証人がいない高齢者らをどう受け入れるのか、医療機関や介護施設側の運用も重要になるとした。

さらに大きいのが、人材、財源、ノウハウの課題だ。これらがいずれも不十分で、支援が十分に行き渡らないと懸念する関係者は少なくない。

高齢者の急変は時間を選ばず、24時間365日、いつ支援が必要になるか分からない。

夜間や休日を含め、社協などが十分な体制を全国的に整えられるのか。少なくとも今の状況をみると、現実的には難しいと言わざるを得ない。無料・低額の支援へのニーズが高まれば、その担い手がパンク状態となる可能性もある。

清水氏は、国がしばしば使う「地域資源」という言葉に違和感があると話した。

「全ての地域で本当にあるのか、開発できるのか。曖昧で便利な言い方だなと思うことがある」

地域の善意や互助などに解決策を委ね過ぎ、結果として現場への丸投げとなることを危ぶむ。

ケアマネジャーが抱えてきた仕事を社協へ移すだけでは、シャドウワークの押し付け合いにもなりかねない。社協が対応できず、再びケアマネジャーに戻ってくれば元の木阿弥だ。

誰が、どこまで、どの費用で担うのか。それをできるだけクリアにしていくことが、引き続き各地域の大きな課題となりそうだ。

◆ 自分しかいない。そう抱え込まない

清水勇希弁護士 株式会社あかり保証代表取締役 全国高齢者等終身サポート事業者協会理事③

清水氏は、社協だけで全てを支えるのはやはり現実的ではないとみる。

資力の乏しい人には公的なセーフティーネットを用意する一方で、一定の費用を負担できる人には民間の終身サポートや保険外サービスを使ってもらう。自治体独自の予算や民間サービスへの補助なども、今後は頼れる選択肢となり得るという。

「サービスへの対価を支払える人には、可能な範囲で支払ってもらうしかない」。

福祉だから何でも無料、ケアマネジャーだから何でも対応する。それでは持続性・再現性がない。限られた人材と財源をどう配分するかという視点が、今後はより重要性を増していく。

今回の法改正は、ケアマネジャーの仕事の境界線を引き直す契機にもなる。

もちろん、引き続きケアマネジャーに期待される役割は大きい。厚生労働省も法改正を通じ、地域包括支援センターの事業に身寄りのない高齢者への相談対応を位置付け、地域ケア会議などを通じた関係者の連携を進める方針を打ち出している。

これからは「全て自分でやる」から、「必要な支援につなぐ」へ。自治体や社協が何を担うのかを地域で把握し、具体的なケースについて早い段階から相談していくことが重要になる。

清水氏は、これまで身寄りのない高齢者を支えてきたケアマネジャーら介護現場の関係者について、「リスペクトされるべきヒーローだ」と語る。だからこそ、現場の善意や責任感に制度の穴を埋め続けてもらうことに警鐘を鳴らす。

ケアマネジャーにかけたい言葉を聞くと、返ってきたのは「持続可能な支援体制をつくるために、何でもかんでも受け過ぎるのもよくない」。これまで「自分しかやる人がいない」と抱え込んできたものを、これからは「堂々といったん吐き出していい」と呼びかけている。

提供元:介護ニュースJoint